夏の暑さが本格化すると、私たち人間だけでなく大切な愛車も大きな負担を感じます。特に真夏の炎天下でのドライブは、車のトラブルのリスクを高めてしまいます。
車のトラブルは、せっかくの外出や仕事を台無しにするだけでなく、思いがけない事故につながることもあります。そこで今回は、夏に起こりやすい車のトラブルとその対処法、そして予防のコツについてお話しします。この記事が、皆さんの安全な夏のドライブに役立てば幸いです。
夏に起こりやすい車のトラブルの種類と対処法
夏の高温環境は、車のさまざまなパーツに影響を与えます。ここでは、特に注意したい4つのトラブルと、それぞれの対処法を見ていきましょう。
1. オーバーヒート
夏の車のトラブルで最も警戒すべきなのがオーバーヒートです。エンジンが異常に熱を持ち、最悪の場合、走行不能に陥ります。
原因: 高温に加えて、冷却水の不足、ラジエーターの故障、冷却ファンモーターの不具合などが挙げられます。
前兆:
- 水温計が異常に高い位置を指している
- ボンネットから白い湯気が出ている
- 甘いような異臭(冷却水の匂い)がする
- エンジンの力が急に落ちたように感じる
起きたらどうするか:
- 安全な場所にすぐに停車し、エンジンを停止してください。
- ハザードランプを点灯し、後続車に注意を促しましょう。
- 絶対に、すぐにラジエーターキャップを開けないでください。 高温の蒸気や冷却水が噴き出し、大やけどをする危険があります。
- ボンネットを開けて、エンジンルームの熱をゆっくり逃がしましょう。
- 熱が冷めてから(少なくとも30分以上)、JAFやご加入のロードサービスに連絡して救援を求めてください。
予防のコツ:
- 定期的に冷却水の量を確認しましょう。 リザーブタンクの「F(Full)」と「L(Low)」の間にあれば問題ありません。
- LLC(ロングライフクーラント)の濃度が適切か確認しましょう。 冬場に凍結防止のため濃度を上げたまま夏を迎えると、冷却効果が落ちる場合があります。
- 走行中に水温計をこまめにチェックする習慣をつけましょう。 異常な上昇に気づいたら、すぐに停車して様子を見てください。
2. タイヤのパンク・バースト
夏のアスファルトは非常に高温になり、タイヤに大きな負担をかけます。特に高速道路などで起こるバースト(破裂)は、重大な事故につながる可能性があります。
原因: 路面温度の上昇によるタイヤ内部の空気圧上昇、空気圧の不足、タイヤの劣化(ひび割れなど)、過積載などが主な原因です。
前兆:
- 走行中に「パン」という破裂音が聞こえる
- ハンドルが急に取られる、またはブレる
- タイヤ空気圧警告灯が点灯する(搭載車の場合)
- 走行中、タイヤ付近から異音がする
起きたらどうするか:
- 慌てずに、しっかりとハンドルを握り、ゆっくりと減速してください。
- ハザードランプを点灯させ、周囲の安全を確認しながら、路肩などの安全な場所に停車します。
- スペアタイヤがある場合は交換、またはJAFやロードサービスに連絡して救援を求めましょう。
予防のコツ:
- 出発前に必ずタイヤの空気圧をチェックしましょう。 指定空気圧を維持することが大切です。
- タイヤの溝の深さ、ひび割れ、傷がないかを確認しましょう。 特にサイドウォール(側面)のひび割れは危険です。
- 定期的にタイヤローテーションを行い、偏摩耗を防ぎましょう。
- 過積載は厳禁です。 車とタイヤに無理な負担をかけないようにしましょう。
3. バッテリー上がり
エアコンやスマートフォンの充電など、夏は電力消費が増えがちです。バッテリーが劣化していると、すぐにバッテリー上がりを起こしてしまいます。
原因: エアコンの長時間使用、ライトの消し忘れ、バッテリー自体の劣化、充電システムの不具合などが挙げられます。
前兆:
- エンジンをかけようとしても、セルモーターが弱々しく回る、または全く回らない
- ヘッドライトや室内灯が暗い、または点灯しない
- パワーウィンドウの動きが遅い
起きたらどうするか:
- 他の車からブースターケーブルを繋いでもらう(ジャンピングスタート)
- JAFやロードサービスに連絡し、救援を求めましょう
- 一度バッテリーが上がってしまうと、バッテリーの寿命が縮む可能性があるので、早めに点検・交換を検討しましょう
予防のコツ:
- 日常的にバッテリー液の量(密閉型以外)や端子の緩み、腐食がないかを確認しましょう。
- バッテリーは消耗品です。2~3年を目安に定期的な点検・交換を検討しましょう。
- 駐車中は不要な電装品(エアコン、ライトなど)を消す習慣をつけましょう。
4. エアコンの不調
夏のドライブに欠かせないエアコン。効きが悪くなったり、異音がしたりすると、車内の快適性が損なわれ、運転の疲労にもつながります。
原因: 冷媒ガス(エアコンガス)の不足、コンプレッサーの故障、エアコンフィルターの目詰まりなどが考えられます。
前兆:
- 冷たい風が出ない、または効きが悪い
- エアコン使用時に異音(キュルキュル、ガラガラなど)がする
- エアコンの風がカビ臭い
起きたらどうするか:
- 冷媒ガスが不足している場合は補充で改善することもありますが、ガス漏れの可能性もあるため、すぐに専門業者に点検・修理を依頼してください。
- 異音や異臭がする場合は、さらに大きな故障につながる可能性があるので、無理に使い続けず、点検してもらいましょう。
予防のコツ:
- 定期的にエアコンフィルターを清掃、または交換しましょう。 目詰まりは冷暖房効率を低下させます。
- 定期的に点検を行い、冷媒ガスの量などをチェックしてもらいましょう。
夏の車のトラブルを回避する日頃の心がけ
車のトラブルを未然に防ぐためには、日頃からの意識と具体的な行動が重要です。万が一の事態を避けるためにも、以下の点を実践しましょう。
1. 出発前の確認を習慣に
短時間のドライブでも、出発前にざっと確認する習慣をつけることで、トラブルのリスクを大きく減らせます。
冷却水、エンジンオイルの量を確認しよう
- 防止すること: オーバーヒートやエンジン内部の損傷を防ぎます。特に冷却水はエンジンの熱を効率よく冷やすために不可欠です。
- コツ: リザーブタンクの「F(Full)」と「L(Low)」の間に冷却水があるか、エンジンオイルレベルゲージで適正な量になっているかを確認しましょう。量だけでなく、色や濁りもチェックポイントです。
タイヤの空気圧と状態をチェックする
- 防止すること: パンク、バースト、燃費の悪化、運転安定性の低下を防ぎます。空気圧が低いとタイヤが過剰に発熱し、バーストのリスクが高まります。
- コツ: タイヤの空気圧は、車両指定の空気圧(運転席ドアの内側などに記載)に合わせましょう。月に一度はガソリンスタンドなどでエアゲージを使って正確に測るのが理想です。溝の深さ(スリップサインが出ていないか)、ひび割れや膨らみがないかも目視で確認しましょう。
バッテリーの状態を確認
- 防止すること: エンジンがかからない、電装品が使えないといったバッテリー上がりを防ぎます。特に夏はエアコンの使用でバッテリーに負荷がかかりやすいため重要です。
- コツ: バッテリー液の量(メンテナンスフリータイプ以外)や、端子の緩みや白い粉状の腐食がないかを確認しましょう。エンジンのかかり具合に普段と違う違和感があれば、早めに点検を依頼しましょう。
2. 走行中もこの点には注意しよう
運転中に車の異変に気づくことも、トラブルを拡大させないために重要です。
水温計をこまめに確認
- 防止すること: オーバーヒートの初期段階を察知し、手遅れになる前に対応できます。
- コツ: 水温計の針が普段よりも高い位置を指していたり、急に上昇し始めたりしたら、すぐに安全な場所に停車して確認しましょう。オーバーヒートの予兆かもしれません。
「いつもと違う」異変を感じたら、すぐに停車して確認
- 防止すること: 小さな異常が大きな故障や事故につながるのを防ぎます。
- コツ: 異音(「キュルキュル」「ガラガラ」「シャー」など)、焦げ臭い・甘い異臭、ハンドルのブレ、ブレーキの効きが悪い、警告灯の点灯など、普段と違うと感じたら、無理に走行を続けず、安全な場所に停車して原因を探りましょう。
3. 定期的なプロによるメンテナンスも検討しよう
日々の点検では見つけにくい、専門的な知識が必要なトラブルもあります。
プロによる定期的な点検整備の推奨
- 防止すること: 潜在的な故障や劣化を発見し、未然に防ぎます。専門家による点検は、車の寿命を延ばし、安全性を維持するために不可欠です。
- コツ: 車検時だけでなく、半年に一度や走行距離に応じて定期的に点検を受けることを検討しましょう。特に夏を迎える前には、バッテリーや冷却システム、エアコンの状態を重点的に見てもらうと安心です。
消耗品の早めの交換を心がける
- 防止すること: 消耗品の寿命によるトラブルを未然に防ぎ、車の性能を維持します。
- コツ: バッテリー、タイヤ、エンジンオイル、ブレーキパッド、ワイパーブレードなど、消耗品にはそれぞれ交換目安があります。走行距離や使用期間を考慮し、目安よりも少し早めに交換することで、突然のトラブルのリスクを減らせます。
まとめ:安全な夏のカーライフのために
夏は厳しい気候ですが、適切な車両管理と日頃の心がけで、ほとんどの車のトラブルは回避できます。大切な愛車を労り、安全なコンディションを保つよう努めましょう。
もしも車のトラブルが発生した際は、無理をせず、必ず安全を最優先に考えて行動してください。 必要であれば、JAFやロードサービス、またはお近くの自動車整備工場に連絡しましょう。
この記事が、皆さんの夏の安全運転の一助となれば幸いです。